公開日: |更新日:
2001年12月発行の「日本口腔インプラント学会 第14巻 4号」に掲載された臨床研究(骨結合型インプラント10年間の臨床成績に関する検討)によると、岩手県立中央病院歯科口腔外科においてインプラント埋入手術を受けた計126例を対象とした調査にて、10年間の累積残存率は93.2%(※1)だったとのこと。天然の永久歯でも虫歯や歯周病で歯を失うリスクがあることを考えると、インプラントに対する「第二の永久歯」という比喩は、決して大げさではないかもしれません。
インプラントの残存率の高さは確かなようですが、もとより安全に受けられる治療なのかどうかという点は、患者として大いに気になるところです。
ここではインプラントの安全性をテーマに、治療のリスクや安全性を高めるポイントなどをご紹介したいと思います。
※1 参照元:2001年12月発行日本口腔インプラント学会.14巻4号『骨結合型インプラント10年間の臨床成績に関する検討』調査対象:1989年10月から1999年10月までに岩手県立中央病院歯科口腔外科において上下顎骨にフィクスチャー埋入手術を行い最終上部構造を装着した計126例(平均年齢49.3歳)【PDF】https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoi/14/4/14_598/_pdf/-char/ja
インプラント治療に関連する主なリスクを見てみましょう。
治療中に起こり得るリスクとして、いくつかの医療事故が考えられます。たとえば、インプラントを埋入する際に神経や血管を傷付けたり、インプラントが上顎洞(上アゴの上方にある空洞)を貫通してしまったりなどの事故です。また、医療事故とは異なりますが、歯科医師の技量不足等が原因で、インプラントを適切な位置に埋入できないリスクもあるでしょう。
しかしながら、一昔前はレントゲンと医師の技量に頼っていたインプラントですが、近年は歯科用CT(神経や血管の位置を立体的に把握できる装置)やサージカルガイド(インプラントを適切な位置に埋入できる装置)などが一般化しています。一昔前に比べると、インプラント治療そのものの安全性は飛躍的に向上しています。
インプラントは外科手術の一種である以上、他の外科手術と同様に、細菌感染リスクがあることは否めません。手術中に使用する器具等の滅菌消毒はもちろんのこと、歯科ユニットや空調にも徹底した管理が求められます。
また、術後の縫合部分から細菌が侵入することもあるため、日常の歯磨きは優しく手入れしましょう。縫合部分を強くブラッシングすると傷口が開き、かえって細菌感染リスクを高めることになるため、優しく慎重に手入れすることが大切です。
一般に、インプラント治療後の患部の痛みや腫れについては、さほど心配する必要はありません。歯科医師に一定の技量があれば、術後に著しい痛みや腫れが生じることはないでしょう。
ただし、ドリルで開ける穴の位置や大きさ、深さなどが適切ではない場合、痛みや腫れが長引くことがあります。インプラントを受ける際には、執刀医の技術力の高さや実績、経験などによく目を通したほうが良いでしょう。
なお、インプラントに備えた骨の造成手術の後にも、痛みや腫れが続くこともあります。
いくらインプラントの残存率が高いとは言え、必ずしもインプラントが10年間保つというわけではありません。骨とインプラントとの結合(オッセオインテグレーション)が弱い場合やインプラント周囲炎が悪化した場合、噛み合わせが悪い場合、インプラントに強い衝撃があった場合などには、インプラントが破損・脱落するリスクがあります。
とりわけ、インプラント周囲炎を予防するための日常的な手入れや定期メンテナンスは、破損・脱落を防ぐための有効な方法です。
インプラントが適切な位置に埋入されなければ、以後は長く噛み合わせの悪い状態が続きます。習慣的に噛み合わせの悪い状態が続くと、食べ物が十分に噛み砕かれないため胃腸に負担が蓄積し、胃腸の調子が悪くなります。
ほかにも、顎関節症や肩こり、頭痛、腰痛、手足のしびれ、イライラ、生理痛、耳鳴り、冷え性、不眠症、鼻づまり、高血圧など、噛み合わせの悪さは様々な体調不良の要因となります。
また、噛み合わせの悪さが原因となり虫歯や歯周病が発生・悪化することもあるため、やがては別のインプラントが必要となってしまう可能性があります。
インプラントの主要な素材はチタンですが、チタンは生体親和性の高い素材なので、金属アレルギーは起こりにくいとされています。ただし、まれにチタンでもアレルギー反応を起こしてしまう方がいるので、事前にパッチテストを行ってインプラントの可否を判断したほうが良いでしょう。
もしパッチテストの結果、チタンにアレルギーを持つことが判明した場合には、チタン以外の素材で作られたインプラントを使用すると良いでしょう。たとえばジルコニア素材のインプラントであれば、金属アレルギーが起こりません。
インプラントを希望しても、禁忌症に該当する疾患等のある場合には、インプラントを受けられない可能性があります。禁忌症をお持ちの方は、インプラントを受ける前に、該当する疾患の治療が必要です。
主な禁忌症の例としては、糖尿病や血液疾患、心筋梗塞・脳梗塞などの発症から6か月以外、骨粗鬆症、高血圧症、重度の歯周病など。禁忌症を治療しないままインプラントを受けた場合、インプラント脱落やインプラント周囲炎などのリスクがあるので注意が必要です。
特定の生活習慣が、インプラントのリスクファクターになることがあります。たとえば飲酒と喫煙。毎日の飲酒習慣のある方の中には、インプラント手術の前後にも飲酒したいと思うかも知れませんが、アルコールは血液循環を早めるため、手術前後に飲酒すると出血が止まりにくくなるリスクがあります。出血傾向により傷口が塞がりにくくなるため、感染症のリスクも高まります。
喫煙もインプラントの天敵です。インプラントと骨をしっかりと結合させるためには、骨や歯茎に十分な酸素や栄養素が届けられなければなりませんが、喫煙すると血流が悪化するため、骨や歯茎に十分な酸素や栄養素が届けられません。結果としてインプラントの結合が弱くなり、最悪の場合、はずれてしまう可能性があります。
安全性の高いインプラントを受けるため、クリニック選びの際には「設備」「医師」「メンテナンス」の3点を確認しましょう。
設備をチェックする際には、感染症リスクを抑えるための十分な滅菌・殺菌器があるかどうか、手術室が個室で用意されているかどうかなどを確認します。また、最近のインプラント歯科医院では歯科用CTの導入が一般的になっていますが、中にはまだ歯科用CTを導入していないクリニックもあるようです。治療の安全性を高めるためにも、歯科用CTの有無を事前に確認しておくと良いでしょう。あわせて、科学的な視点から患者ごとの治療をサポートするサージカルガイドシステムを導入しているかどうかも、念のため確認しておきたいポイントの一つです。
インプラント治療をサポートする各種の設備に加え、執刀する歯科医師のインプラント症例の経験も確認しておきましょう。
直接医師に質問して信頼できるかどうか確認するのも良いですし、公益社団法人日本口腔インプラント学会による認定資格「口腔インプラント指導医」または「口腔インプラント認定医」が在籍しているかどうかを指標のひとつにするのも良いでしょう。
これらの資格は学会の厳しい試験・審査をクリアした医師に与えられるものであり、インプラント治療に関する知見を見極める一つの指標になるためです。
インプラントを長持ちさせるためには、1年に2~3回のペースでメンテナンスを受けることが大切です。そのため歯科医院を選ぶ時には、定期的なメンテナンスを行ってくれるかどうかを確認することが必須です。
なお、インプラント治療は自由診療(クリニックが治療費を自由に設定できる保険適用外の治療)となるため、定期メンテナンスの費用はクリニックによって異なります。一般的には1回3,000~5,000円程度の費用がかかりますが、クリニックによっては、保証期間内の無料でメンテナンスを行ったり、当初の治療費の中にメンテナンス料金も含んでいたりするところがあります。メンテナンスの有無とあわせて、メンテナンス料金についてもしっかりと確認しておきましょう。
インプラントを受けるべきかどうか以前に、口の中に何らかの異常が生じた場合には、速やかに歯科医院を受診することが基本です。インプラントが必要な状態になるまで症状を悪化させないことが何より大切であることは、言うまでもありません。
歯科医であれば誰でもインプラント治療が行うことができますが、前述したように虫歯治療と違ってインプラントは、大切な神経や血管が通る骨を削って、そこへインプラントを埋入していくため、専門的な知識や技術のある医師に診てもらいたいものです。ここではインプラントの主要学会で日々研鑽し知識を身につけ、技術やスキルがあるとして認定された指導医をご紹介します。
骨の量が足りず
治療できるか不安なら
TEL: 044-201-4880
一緒に口腔内の疾患も
診てもらいたいなら
TEL: 044-222-6440
合わない総入れ歯に
お悩みなら
TEL: 044-877-3231
※インプラント専門医について
・当サイトでは、インプラントの主要学会(ICOI(国際口腔インプラント学会)・ISOI/DGZI(国際口腔インプラント学会)・日本口腔インプラント学会・日本顎顔面インプラント学会・国際審美学会OAM先進インプラント)の各公式サイトで「指導医資格を持ったドクターが在籍」と紹介のクリニックの医師を専門医として紹介。(2023年7月19日調査時点)