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インプラント治療のひとつ、「フラップレス手術」とは歯茎の切開・剥離・縫合を行わずインプラントの埋入を行う方法です。こちらの記事では、患者の負担を軽減できる点が大きなメリットとなるフラップレス手術について紹介していきます。
「フラップレス手術」とは、歯茎を切開せずに行えるインプラント手術の方法です。この方法を用いることにより、切開による出血量を抑えられ、さらに手術後の痛みや腫れの軽減も可能です。
一般的なインプラント手術では、歯茎を切開したのちに歯槽骨をドリルで削ってインプラント体を埋め込みますが、フラップレス手術は歯茎に小さな穴を開けてそこからドリルで切削を行います。そのため、歯茎の剥離や縫合を行う必要がない点が特徴です。
手術が可能かどうかを見極めるため、また治療計画を立てるために診査を行います。身体の状態の問診、口腔内の診察、CT撮影などを行い、患者それぞれに合った治療計画を立てます。
歯茎にドリルを通すための小さな穴を開けます。穴を開ける際には、パンチまたはバー(歯を削るドリル)などを使用します。
歯茎に開けた穴からドリルを使用して歯槽骨を切削し、インプラント体を埋め込みます。この時には削りすぎないようにドリルストッパーを使用します。埋め込んだインプラント体にキャップをつけて手術は終了です。
インプラント体の埋入後、インプラントと歯槽骨が結合するための期間(およそ4〜6ヶ月)を置きます。結合したことを確認したら、人工の歯を装着するための土台(アバットメント)の取り付けを行います。
アバットメントに患者に合わせて作成した人工の歯を装着してインプラント治療は完了します。インプラント治療後は、インプラント周囲炎を予防して長く使うためにも日常の清掃と定期的なメンテナンスを行っていきます。
フラップレス手術は、歯茎の切開・剥離・縫合が必要ないという点が大きな特徴です。このことから、手術時の痛みや腫れ・出血量を抑えられ、手術を受ける患者の負担軽減が可能となります。さらに、体へ与えるダメージが少ないことから、手術後の痛みや腫れの軽減にも繋げられます。
フラップレス手術を行う場合、手術は1回で完了することに加え、縫合が必要ないために抜糸のために歯科医院に足を運ぶ必要もありません。このことから、通院回数が少なくなるという点も大きなメリットといえるでしょう。さらに、体への負担が少ないため、治癒が早く治療期間の短縮にも繋がる可能性もあります。
歯茎の切開や剥離、縫合を行う通常のインプラント手術では、歯茎が引きつれることによって下がってしまう場合があります。しかし、フラップレス手術の場合は歯茎を切開・縫合しないため、歯茎が引き連れて下がってしまうリスクを軽減できます。
全てのケースにおいてフラップレス手術が可能なわけではなく、口腔内の状況などによっては手術が適さない場合もあります。このことから、事前の診断を慎重に行っていく必要があります。
術前にはシミュレーションを行いますが、手術中に想定していたものとは異なる状況となる可能性もあります。このような場合には、切開を伴う通常のインプラント手術に切り替えを行うといった可能性もあります。
フラップレス手術を行う場合には、CTを使用した診断と事前のシミュレーションを入念に行う必要があることに加え、高度な治療となることから、どの歯科医院でも行える手術ではありません。治療を受ける場合には多くの症例がある歯科医院を選択することが望ましいといえるでしょう。
インプラント体を埋め込むための顎の骨量が足りない場合には、骨造成手術や骨再生の治療を行ってからインプラント手術を行います。また、骨の量は十分でも高さや厚みが足りないといったケースもありますが、この場合についてもフラップレス手術が向いていないといえます。特に前歯については顎の骨が小さいケースが多いため、フラップレス手術が不向きであることが多いといえるでしょう。
インプラントを埋入する場所によっては、血管や神経が複雑に通っている場合があります。このような場合には、フラップレス手術は向いておらず、しっかりと目で確認しながら慎重に手術を進めることが必要になります。万が一神経や血管を傷つけてしまった場合には、麻痺が残ってしまう・大量に出血するという可能性があるためです。
ここでは、2021年発行の「日補綴会誌 13巻 2号」に掲載された症例(顎堤吸収が著しい下顎無歯顎患者に対しインプラントオーバーデンチャーを用いた症例)をご紹介します。患者は80歳女性(初診時)で、下顎の義歯が合わず会話と食事がしにくいという悩みを持ち来院。
こちらの女性の場合には、下顎の両側の臼歯部(奥歯)において歯槽骨の吸収が見られることによって義歯を安定した状態での使用が難しいため、サージカルガイドを使用したフラップレス手術を行うことによって2本のインプラントを埋入しています。さらにこのインプラントを支台として、磁力でくっつくタイプの入れ歯を装着しました。この入れ歯はインプラントを支えにして安定させられるため、しっかりと噛める上にずれる心配がほとんどないというメリットがあります。
こちらのケースでは、最終的な補綴装置を装着してから3年経過した時点で、インプラント周囲骨周辺の異常吸収や周囲粘膜の異常所見は見られておらず、良好な経過となっています。
参照元:2021年発行日補綴会誌 13巻 2号『顎堤吸収が著しい下顎無歯顎患者に対しインプラントオーバーデンチャーを用いた症例』昭和大学歯学部歯科補綴学講座 福西美弥 2020年5月29日受付/2021年1月27日受理【PDF】
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajps/13/2/13_162/_pdf/-char/ja
フラップレス手術の概要やメリット・デメリット、流れなどについて紹介しました。こちらの手術は患者の負担を軽減できるという点が大きなメリットとなることから、できるだけ体に負担をかけないインプラント治療を受けたいと考えている方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
もし、自分の歯に異常を感じた場合やインプラント手術を考えている場合にはクリニックへ足を運び、専門的なアドバイスを受けるようにしましょう。
歯科医であれば誰でもインプラント治療が行うことができますが、前述したように虫歯治療と違ってインプラントは、大切な神経や血管が通る骨を削って、そこへインプラントを埋入していくため、専門的な知識や技術のある医師に診てもらいたいものです。ここではインプラントの主要学会で日々研鑽し知識を身につけ、技術やスキルがあるとして認定された指導医をご紹介します。
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・当サイトでは、インプラントの主要学会(ICOI(国際口腔インプラント学会)・ISOI/DGZI(国際口腔インプラント学会)・日本口腔インプラント学会・日本顎顔面インプラント学会・国際審美学会OAM先進インプラント)の各公式サイトで「指導医資格を持ったドクターが在籍」と紹介のクリニックの医師を専門医として紹介。(2023年7月19日調査時点)